シャドーバンキング(Shadow Banking)とは、日本語では「影の銀行」と表現されます。

シャドーバンキングの指すものは、「銀行ではなく、証券会社やヘッジファンド、その他の金融会社が行う金融仲介業務」です。

シャドーバンキングの主な役割としては「通常の銀行融資を受けられない相手に、高金利で貸し付けたり、投資したりすること」が挙げられます。

金融安定理事会の調べでは、シャドーバンキングの規模は2017年末に世界で117兆米ドルに膨らんでいることが報告されました。

そのため、金融安定理事会では「シャドーバンキング」という言葉は、基本的には使用ひない方針になりました。

シャドーバンキングはもはや「影の」存在ではない、と言えるでしょう。

なお、シャドーバンキングの資金源は、銀行が販売する金融商品の1つ「理財商品」が代表的です。

この「理財商品」の多くは、半年以内の短期間で償還を迎えるのが特徴です。

シャドーバンキングは高金利であるため、借り手側からすると返済は苦しくなる傾向にあります。

アメリカにおけるシャドーバンキング

アメリカでのシャドーバンキングの始まり

アメリカにおけるシャドーバンキング・システムは銀行システムと密接な関係で発展した背景があります。

もともと、アメリカの銀行業界は、銀行と証券会社、保険会社等の分離を定めたグラス・スティーガル法(1933年)による規制の下に置かれていました。

ところが、1970年代以降の規制緩和が、MMFや証券化商品といった形態でのシャドーバンキングを発展させた、という経緯があります。

その後、グラム・リーチ・ブライリー法(1999年)の制定によりグラス・スティーガル法が廃止されると、米国では銀行を中心としたメガ銀行グループが相次いで誕生しました。

銀行、証券、資産運用等の機能をグループ内に囲い込んだメガ銀行グループは、本来期待されていた「金融スーパーマーケット」としての機能を果たすことなく、収益性の高い証券化ビジネスを従来以上に複雑な形態で発展させることに躍起となりました

これが米国シャドーバンキングの発展を助長したと考えられています。

以上が「銀行がシャドーバンキングを発展させた」フェーズです。

アメリカでのシャドーバンキング第2フェーズ

アメリカにおいて、リーマンショックをきっかけに金融規制が強化されると、シャドーバンキングは次のフェーズに入ることになりました。

次のフェーズでは、商業銀行・投資銀行の信用創造機能が低下し、代わってノンバンクによる貸出が増加したのです。

こうして、銀行の穴を埋める形で、シャドーバンキングの役割が拡がって行きました。

つまり、リーマンショック以降は「商業銀行・投資銀行の機能低下を埋め合わせるために、シャドーバンキングが独り歩きを始めた」フェーズと言えます。

シャドーバンキングそのものが、独立したビジネス領域としての立ち位置を確立し始めたのです。

アメリカのシャドーバンキングの代表的なものとしては、以下が挙げられます。

  • MMF・投資信託といった投資ファンド
  • 住宅ローンの買い取りを行うファニー・メイ
  • フレディ・マックのような政府援助法人(GSE = Government Sponsored Entities)
  • ABS(証券化)

中国におけるシャドーバンキング

2022年現在、中国ではシャドーバンキングによる取引規模が急激に大きくなっています。

中国におけるシャドーバンキングの資金運用先によっては、米国で起こったサブプライム・ローン(低所得者向け住宅ローン)のような問題が発生することも危惧されています。

2022年現在、シャドーバンキングにおける借り手は、中小企業や、地方政府傘下の投資会社などである点も押さえておくとよいでしょう。

景気悪化でデフォルト(債務不履行)が相次いで発生すれば、中国経済および世界経済の混乱につながる恐れもあります。

そのため、先進各国はもちろん、国際通貨基金(IMF)も中国におけるシャドーバンキングの状況を警戒しています。

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