1. はじめに
現在、住宅ローン金利において「実質マイナス金利」の状況が出現しています。住信SBIネット銀行やauじぶん銀行をはじめとした金融機関が、金利引き下げ合戦を繰り広げ、その結果、住宅ローン金利が大幅に下落したことが原因です。このような状況が発生した理由や影響、今後の展望について、本記事では詳しく解説していきます。
住宅ローン金利は、長期金利と短期金利が大きな影響を受けます。最近では、長期金利が上昇する一方で、短期金利は低水準を維持しています。このため、変動金利に連動する住宅ローンは0.5%前後という極めて低い水準にあります。
また、住宅ローンは金利と団体信用生命保険(団信)の2つの要素から成り立っています。借り入れる金利は、「実質的な金利コスト」と「団信の価値」を合わせたものになります。そして、住宅ローン金利がマイナスになるということは、「実質的な金利コスト」がマイナスになってしまうということです。
このような状況が発生した理由には、銀行の数が増えたこと、住宅ローンが差別化しにくい商材であること、スマホの登場により住宅ローンのネット比較が一般化したことなどが挙げられます。今後は、低金利グループと高金利グループの明確な二極化が進むと予想されており、クロスセルの仕組みをうまく作れた銀行が生き残り、それ以外の銀行は競争から脱落する可能性があります。
本記事では、これらの問題点や背景について詳しく解説し、住宅ローンを検討する方々の参考になるように情報を提供していきます。
2. 住宅ローン金利が下がる理由
住宅ローン金利が下がる理由には、銀行の数が増えたこと、住宅ローンが差別化しにくい商材であること、そしてユーザーがスマホで住宅ローンを選ぶようになったことが挙げられます。
まず、住宅ローン金利を下げる一番の原因は銀行の数の増加です。競争が激化した中で、住宅ローンを集客ツールにするため、銀行は金利を引き下げることがあります。その結果、金利引き下げ競争が進み、住宅ローン金利が低下することになります。
次に、住宅ローンが差別化しにくい商材であることが低金利競争の背景にあります。住宅ローンはどの銀行も同じような商品を提供しており、金利が低くなると価格面での差別化が難しくなります。これが、低金利競争を加速させる要因となっています。
そして最後に、スマホの普及によって住宅ローンの比較が容易になったことも低金利競争を加速させた一因です。スマホの普及によって、他行の金利が簡単に比較できるようになり、低金利の住宅ローンに人気が集中するようになりました。
以上のような理由から、住宅ローン金利が下がることになりました。銀行が住宅ローン金利を引き下げる一番の原因は、銀行の数の増加による競争激化です。住宅ローンが差別化しにくい商材であること、スマホの普及によって住宅ローンの比較が容易になったことも低金利競争を加速させました。
3. 実質マイナス金利とは何か?
住宅ローン金利が下がり、実質マイナス金利の商品が登場するようになってきました。実質マイナス金利とは、住宅ローンの金利コストがマイナスになる状態のことです。
住宅ローンは、金利と団体信用生命保険(団信)の2つの要素で構成されています。そのため、実質的な金利コストは金利コストと団信価値を足し合わせたものとなります。たとえば、住宅ローン金利が0.5%で団信価値が0.2%の場合、実質的な金利コストは0.5% – 0.2% = 0.3%となります。
団信価値は、保険金の期待値から計算できます。たとえば、住宅ローンがゼロになる団信の場合、生存率と発生率、住宅ローン残高を考慮してその価値を計算することができます。
住宅ローン金利が低下し、実質マイナス金利の商品が登場するようになった背景には、住宅ローン市場の競争激化があります。多くの銀行が住宅ローンを提供しており、競争が激しくなると金利引き下げ合戦が起こりやすくなります。さらに、住宅ローンは水や電気のように商品差別化しにくいため、金利が優れている銀行に顧客が集中しやすい状況が生まれました。
実質マイナス金利が現実化することで、住宅ローンの競争が一層激化することが予想されます。銀行は、住宅ローンだけでなく、クロスセル商品で収益を確保する戦略が求められることになるでしょう。
4. 実質マイナス金利商品が登場した3つの理由
住宅ローン金利が実質マイナスになる中、銀行がマイナス金利を採用する住宅ローン商品を発売するようになりました。このような商品が登場した背景には、3つの理由があります。
1つ目は、銀行の数が多くなったことです。低金利を武器に住宅ローンをネットで集客強化する銀行は10年前に比べて倍増しています。現在はメガバンク、ネット系銀行、主要地方銀行などを合わせると20行以上あります。需要に比べて提供側が多くなると、どうしても値崩れしやすいのです。
2つ目は、住宅ローンが差別化しにくい商材だという点です。お金に色はありませんので、「A銀行は金利が高いけれども、金利の低いB銀行よりは良い」となりづらい。別の言い方をすれば、住宅ローンは水や電気のようにコモディティ化しているとも言えます。この点も金利競争を促しやすいと言えるでしょう。
3つ目は、ユーザーがスマホで住宅ローンを選ぶようになったことです。10年前であれば住宅ローンは不動産会社の営業マンが紹介することが多く、「住宅ローンの比較」があまり一般的ではありませんでした。それがスマホの登場によってネット比較が当たり前になり、他行の金利がガラス張りで横比較されるようになったため、低金利の住宅ローンに人気が集中するようになったのです。
こうした市場の構造ゆえに、銀行も簡単には金利引き下げ合戦を止められないわけです。このような状況下で、銀行は新たな商品やサービスの提供によって、差別化を図りながら競争に参戦していくことが必要となっています。
5. 低金利銀行と高金利銀行の二極化へ
現在、住宅ローン金利が低水準で推移しています。そのため、銀行は住宅ローン金利を下げることで、集客を図っています。しかし、住宅ローン金利が下がりすぎると、銀行の収益に影響が出てきます。そこで、今後は低金利銀行と高金利銀行の二極化が進むと考えられています。
まず、銀行は住宅ローン金利が低い場合、保険や投資信託などのクロスセル(併売)で収益を確保する必要があります。住宅ローンが集客ツールになり、収益は別の商品で上げる戦いになると考えられます。そのため、クロスセルの仕組みをうまく作れた銀行は低金利を維持することができ、大きなシェアを取ることができるでしょう。
一方、クロスセルの仕組みを作れない銀行は低金利を武器にした戦いはできません。ゆえに、「審査が柔軟」「団信が充実」など金利以外の訴求ポイントを作らなければ競争から脱落してしまうと考えられます。
また、低金利グループと高金利グループのふるい分けの時期ともいえます。低金利グループには、ネット系銀行を中心とした銀行が含まれます。住宅ローン金利が低いことで、ネット比較でランキング上位を取ることができ、申し込みシェアを取ることができます。一方、高金利グループには、地方銀行や信用金庫などが含まれます。地方銀行は、地元に根ざしたサービスを提供することで、顧客を集めることができます。
以上のように、住宅ローン金利が下がりすぎることで、低金利銀行と高金利銀行の二極化が進むと考えられます。クロスセルの仕組みや訴求ポイントをうまく作り、顧客を獲得することが求められるでしょう。
6. まとめ
本記事では、住宅ローン金利の現状とその下落に至る理由、実質マイナス金利の概念とその計算方法、実質マイナス金利商品が登場した理由、そして今後の見通しについて説明してきました。
住宅ローン金利が下がった背景には、銀行の数が増えて提供側が過剰になったこと、住宅ローンが差別化しにくい商材であること、そしてネット比較の普及によって金利が透明化されたことが挙げられます。これらの要因が重なり、競争が激化し住宅ローン金利が下落したと考えられます。
また、実質マイナス金利とは、金利コストが負の値になる状態のことを指します。住宅ローンの場合、金利コストと団信価値を合わせた実質金利がマイナスになると、借り手が銀行から利息を受け取ることになります。
実質マイナス金利商品が登場した背景には、銀行の収益の多角化が必要になったこと、住宅ローンが商品化され比較が容易になったこと、そしてネット系銀行などの登場によって低金利を軸にした新規参入が容易になったことが挙げられます。
今後、低金利銀行と高金利銀行の二極化が進むと予想されます。クロスセルによって収益を確保できる銀行は低金利を維持し、一定のシェアを確保できるでしょう。一方で、クロスセルの仕組みを作れない銀行は低金利を武器にした戦いはできず、市場から脱落してしまう可能性があります。
今後の見通しについては、住宅ローン金利が一時的に低下した状況は続くものの、長期的には金利が上昇する可能性があるため、消費者は金利の変動に注意し、返済計画を立てることが重要です。また、銀行側はクロスセル以外にも、新たな収益源を見つける努力が求められます。
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